以下では、(人身・死亡事故被害に遭った)高齢者の損害賠償を請求する場合に生じる問題点をQ&A方式で紹介します。
Q1
高齢者にも逸失利益は認められますか
A
認められることもあります。
高齢者が就労している場合は当然として、その他にも、
・(家族のために)家事に従事している場合
・就労の蓋然性が認められる場合
などの場合に、逸失利益が認められています。
Q2
高齢者の労働能力喪失期間について教えて下さい。
A
被害者が高齢の場合、原則として、67歳までの年数(就労可能年数)と、平均余命年数までの期間の2分の1のいずれか長い方になります。
以上を原則としつつ、被害者の性別・年齢・職業・健康状態等の事情を考慮して判断することになります。
Q3
子供夫婦等と同居している場合も、家事従事者として認められますか。
A
自身以外の家事を行っているのであれば認められます。
この場合、家事を分担して行っていると考えられるので、実際に分担している家事労働の内容、従事できる労務の程度等を考慮して、通常の家事従事者の基礎賃金よりも減額されることが多いです。
このことは、親元にいる子供が、家事の多くを分担している場合にもあてはまります。
Q4
家事従事者の平均賃金を算定する際、年齢や生活状況等は考慮されますか。
A
はい。
例えば、被害者がかなりの高齢の場合、家族との生活状況や、自身の身体状況等を考慮して、賃金センサスの平均賃金から減額した額を基礎収入とする例がみられます。
Q5
身内の介護を行う人が家事従事者と認められることはありますか。
A
はい。
例えば、無職の高齢の男性が寝たきりの妻を介護していたのを家事と認定し、休業損害等を認めた例があります(女性・学歴計・全年齢)。
Q6
年金の逸失利益は認められるのでしょうか。
A
国民年金、厚生年金、障害年金等、被害者が保険料を拠出しており、家族のための生活保障的な性質をもつものについては、逸失利益が認められます。
なお、老齢年金等に属する年金であっても、扶養家族の有無などを理由として支給される加給年金等は、逸失利益算定の基礎収入額から除外されます。
Q7
遺族年金についても逸失利益は認められますか。
A
設問のように、遺族年金など受給者の保険料負担のない社会保障的な性質を有するものは、逸失利益が否定されます。
Q8
年金収入に加えて稼働収入がある場合、生活費控除率はどのように算定されますか。
A
稼働収入の逸失利益も認められる場合の損害方法には、主に次の2方式があ
ります。
1.稼働収入のある期間は稼働収入との合計額をもとに稼働収入による逸失利益算定の場合の生活費控除率による算定をし、その後の年金収入だけの期間はより高率の生活費控除を行う方法
2.稼働収入の逸失利益と年金逸失利益を分離して、年金逸失利益については稼働逸失利益より高い生活費控除率で算定する方法
以上で述べた内容を簡単にまとめると以下のとおりです。
(逸失利益の)肯定例
・国民年金
・厚生年金
・障害年金
(逸失利益の)否定例
・遺族年金(受給者に保険料負担はなく、社会保障的な性質を有しているため)
以上
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