脳外傷・高次脳機能障害(6)

・留意事項

 

(1)脳外科医が見落としていないかをチェックする

   脳損傷を伴う交通外傷の場合は、生死の境をさまようような重篤な状態が一定期間

  続くことが多いため、命が助かり、そのうえ奇跡的に意識も回復すれば、それ以上の

  異変に気付かないことが多いです。

   特に、麻痺等の身体障害が生じない場合は、異変に気づきにくいです。

 

(2)退院後の家庭生活でも、家族すら奇跡の回復を祝している間は、その異変に気づか

  ず、社会復帰して相当期間経過後に初めてその異変に気づくケースがあります。

 

(3)被害者本人が病識(私は事故前と比較して変わった旨の認識)を持たないことが多

  いです。

 

(4)認知能力低下や人格変化を客観化するには、専門医師にこれらの検査の実施を依頼

  することが重要です。

   認知機能に関する神経心理学的検査としては、ウェクスラー成人知能検査(現在は

  WAIS‐Ⅲ、以前は旧版のWAIS‐Rが提出されていました。)が自賠責障害認

  定実務ではよく提出されています。なお、年少者の場合のウェクスラー式検査はWI

  SC(現在はWAIC-Ⅳ、旧版はWISC‐Ⅲ)検査が使用されます。このほかの

  年少者向けのものには、WPPSIなどもあります。記憶機能障害をテストするもの

  としては、三宅式(東大脳研式)ウェクスラー記憶検査(WMS‐R)、ベントン資

  格記名検査等が使われています。

   遂行機能障害・注意力障害を評価するものとしては、WCST(ウィスコンシン・

  カードソーティング・テスト)、BADS、あるいはTMT(トレイル・メイキング

  ・テスト)、かな拾いテストなどが使われています。

   人格あるいは性格の変化を心理検査で的確に把握することは現状では難しいようで

  ありますが、心理検査〈よく見られるものとしては、矢田部・ギルフォード性格検査、

  MMPI(ミネソタ多面人格目録)、ビネー式検査、バウムテスト等〉により、抑う

  つ・無力性・過感・強迫性・自己不確実・内閉・粘着性・気分易変性・爆発性等の性

  向をプロフィールによって示すことが可能です。

 

(5)他の精神疾患や糖尿病性脳症のように、他の病気に起因する脳機能変化もあります

  ので、認知機能の低下や人格の変化のみで、「外傷性高次脳機能障害」とは速断でき

  ません。

 

(6)子供が高次脳機能障害被害者の場合には、現状がたいしたことがなくても発達阻害

  による障害程度の拡大(成人に達した場合の社会活動能力の低下)が考えられ、相当

  長期の経過観察を必要とする場合が多いです。

   老人の場合は、痴呆性の症状と外傷起因の脳障害との区別がつきにくく、外傷性高

  次脳機能障害被害者と認定するのに困難が生じる点に留意するべきです。

 

(7)「外傷性高次脳機能障害」として扱うまでに、相当長時間を要する場合があり、こ

  の間、示談解決済であったり、自賠法16条請求の時効期間満了等、法律上解決が困

  難となる障壁が存在することに留意するべきです。

   ただし、時効の問題は極めて微妙です。  

                                      以上

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